義務教育等教員特別手当・教員特殊業務手当に関わる交渉が行われました。

 11月10日に、義務教育等教員特別手当・教員特殊業務手当に関わる2回目の交渉が県庁で行われました。県教組からは本部役員、支部役員、専門部役員が参加し、高教組からの参加者とともに交渉に臨みました。県教委からは山口教育長、平沢次長、原次長他課長クラスが参加しました。
 両教組の主張は以下の通りです。
1 4日以降の検討で提案を修正する部分があったら示してほしい。
2 06年に長野県が独自に削減した給料の調整額やへき地手当等も国に準じたものに戻すべきと考えるが、戻すことは検討しなかったのか。
3 教育現場では困難性も増しており、超勤も増える一方の中で、義務教育等教員特別手当を削減することは、到底納得できない。提案の撤回を求める。
4 部活動関係指導手当については、3区分それぞれ倍増すべき、少なくとも県独自で必要性を認めて上乗せしていた分は、県の部活の実態や特殊性・困難性が変わっていないのだから、国基準に上乗せすべき。
5 部活動指導手当の増額の趣旨から考えても、平日の部活動についても、困難性に配慮した手当の枠を設けるべき。
6 教員特殊業務手当はすでに08年10月から国庫負担等増額されてきているので、当然10月に遡って支給すべき。
7 08年10月から措置されている教員特殊業務手当を1月から実施するのなら、義務教育等教員特別手当の削減時期も当然3ヶ月先送りすべき。
 以上のような主張を市川書記長が改めて行いました。これに対して、県教委からは「1については、厳しい状況の中での判断であり、お願いせざるをえないという姿勢は変わっていない。2については06年5月30日に合意して、10月1日に適用になっており、今からは戻せない。3については、下げ幅の圧縮や先送りの検討も、現在は考えていない。現場の困難性については主幹主事による聞き取り等で把握してきているが、この部分については教職調整額の検討が現在文部科学省で行われている。4については、1日1200円という基準では低いので県単で上乗せをしていた。今回の改定で2400円となった。従来を上回る金額となったのでそれ以上の上乗せは困難である。5については平日の部活の困難性はよく分かる。教育活動の中での部活のポジションも分かるが、手当にすることはできない。6については人事委員会勧告で実施時期が明示されていない場合は遡及できないことが通例である。事務処理上も困難である。7については県の財政事情が困難であり、共に1月1日からの適用でお願いしたい。」というような回答でした。
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 続いて交渉参加者からの発言があり、下伊那支部からも委員長が以下のように義務特手当削減反対の発言しました。
 「今ほど、教育の大切さが叫ばれている時代はありません。しかし残念ながら政府がとっている政策は、行革推進法や骨太の方針などによるカネやヒトを減らす政策ばかりです。言わば教育現場で必死で努力している教職員の夢と希望を打ち砕く政策でした。06年度の全国の教員の定年退職比率は13.8%で、退職前にやめる比率が86.2%であります。定年前に心身共に力尽きてやめていく仲間がいかに多いか。来年度からは新学習指導要領の試行も始まって授業時間も増加し、現場の混乱と疲弊いっそう増すことが予想されます。
 下伊那では04年には寒冷地手当の削減、06年にはへき地手当の削減と給与の削減が続いています。県教組下伊那支部では支部拡大闘争委員会を開いて、各学校の職場長さんの生の声を壁に貼ってある寄せ書きに書いていただきました。そのいくつかを紹介したいと思います。
・現在学校現場はさまざまな問題が山積しています。私たちは日々それに立ち向かっているのです。そのような私たちの給料が減るということは、教育に対する私たちのやる気もうばうものです。給料減にはあくまでも反対です。
・人を育てるということがどんなに大変なことか、今、教育に問われています。本気になって教育のことを考えてください。人を育てる仕事の我々をもっと支援してください。
・我々の勤務実態を理解して頂きたい。若い人たちが希望を持てる職業であってほしい。それに見合うような給与であって欲しいのです。
・毎日朝早くから遅くまでがんばらないと仕事が回っていきません。一生懸命子どものためにがんばっています。義務特手当削減の見直しをお願いします。希望を下さい。
・財政難もわかりますが、国の将来は教育にかかっています。長い目で見た教育行政を考えていただきたい。
・朝早くから夜遅くまで、時に休日にも学校に来て教材作り・授業準備をしています。すべて子どもたちのことを思えばこそです。そのためのエネルギーを下さい。
・教員としての誇り・使命でがんばっている。命を削る勤務実態を正しく理解されたい。
 義務特手当の根拠である人材確保法の精神は今日、失われるどころかますます重要になってきています。それは文科大臣の今までの何回かの発言の中でも繰り返し触れられていますし、県教委の皆さんの考えも同じだと理解しています。今日の交渉は全国的にも注目を集めています。我々を元気づける県教委の皆さんの英断を期待します」
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 他にもフロアからは「障害児の教育には困難を伴う部分がある。だから国も他県も調整額という形で残している。是非復元してもらいたい。長野県の障害児教育は定数不足もあり困難性が高い。また日額手当化で余計な事務量も増している」「これは形を変えた給与カットである。知事が替わって、前知事のやり方は県民に否定されている。再考してもらいたい。」「携帯TELの使用量など私費負担が大きい実態がある」 「私たちは自己負担によって県財政に貢献している。パソコン、ガソリン高騰による通勤手当、部活の審判服、修学旅行、3年間の給与カットでは240億円。それなのに知事の給与は上がっている実態がある。どう考えるのか?」などの発言が相次ぎました。
 また、教員特殊業務手当に関わっては「平日の部活手当は本当に県民の理解が得られないのか?実態を保護者に話すとみんなびっくりしている。是非再考してほしい。内容は明らかに賃金カット。財政当局に屈しないでほしい。」「若い先生は部活に熱心。やればやるほど持ち出しが増える。部活動は日々の積み重ねが大切、その意味で平日にも手当を出してほしい。平日の部活動も困難を抱えている。」「部活動は学校教育に必要だと考えているのか。なぜ手当が付けられないのか?理由を説明してほしい。教育として認めてほしい。中体連以外の大会が旅費申請できない。地域の活性化や交流のために出ている大会もある。こういった大会も認めてほしい。」「周囲の県よりも所得が低いのに、また下げられるのか。支給増額と負担軽減を図ってほしい」「部費の5000円も支払えずに来月まで待ってくれという家庭もある。そうした生徒を抱えて現場は必死になってやっている。改革プランの対象校になると仕事が多い」「定時制高では3.4時間目の体育が集中している。全日制の部活動が20:00過ぎまで行われているからである。困難だけで片付けてほしくない。私たちは必要な手当について主張しているが取り上げてもらえない。困難性を理解しているなら、それを励ます施策をしてほしい」「1日の通勤距離が長く。1ヶ月で16000円~20000円の持ち出し。年間20万~30万の持ち出し。これだけ県財政に貢献している。2400円ではアルバイト代を下回る金額である」などの意見がありました。
以上のようなフロアからの主張に対して県教委は
「小中高それぞれにとって、部活動は重要であると認識している」
「部活動引率業務と8時間従事の金額が2400円と同じなのは、同程度の困難性という認識かということについては、たまたま同じという認識であり、同じという意味ではない。全て今の県の支給金額を上回っており、結果として同じになった」
との回答を行い、16:00から休憩、再検討に入りました。

16:35に委員長・書記長の呼び込みがあり、高教組、執行委員会での協議の後、17:35から参加者に対する県教委の再回答の説明がありました。
「平成22年3月31日までの間、部活動指導業務に従事した時間が8時間に及ぶ場合は、2400円に50円を加算する」という内容でした。
 これに対して参加者からは「これ以上進めていても、支部のことを考えるととても飲めない。決裂についても論議する必要がある」「へき地手当や調整額の件については、国並みにできるようにきちんと詰めてもらいたい」「平日の部活手当について再検討させてほしい」「義務特手当の削減の主因が制度的な理由なのか、財政的な理由なのかをはっきりさせるべきだ」「小学校の職員には何も恩恵がないことになる。慎重にしてほしい」「来年度からさらに削減されるような予算措置がされるおそれがある。今後も続けて減らされる展開は避けたい。断固認められにという主張をしてほしい」などの意見が相次ぎ、18:05から再度の押し込みが行われました。

 19:25~県教組交渉団に再度の押し込みの結果についての説明がありました。「平成22年3月31日までの間、部活動指導業務に従事した時間が8時間に及ぶ場合は、2400円に100円を加算する」という内容で、1回目の回答より50円が上乗せされました。そして本部としては「県独自の上乗せ措置を残したことに意味がある。今後につながる部分ができたので、交渉終結としていきたい。決裂した場合でも結果としては条例案は県議会に提出されてしまう。」という説明と提案がありました。
 これに対して参加者からは「やむを得ない面もあるが、もう1回努力してほしい。へき地手当や調整額の見直しについて、また人確法を尊重したいなど、これからの交渉につながるような口頭確認がほしい」「妥結すべきではない。口頭確認が取れるような状況ではない。100円の加算が悪いとは言わないが、後ろの組合員の声もある。賃金カットの時も組合員が減ってしまった」「ここで合意はできない。分断の動きに乗ってしまう。小学校、中学校、特別支援学校がバラバラになってしまうことは避けたい」「決裂で得るものはあるのか、それでは相手が楽をするだけ。我々の足かせを取り払う発言をさせたい。へき地手当や調整額について現場の認識を伝えて、これからの足がかりにしたい」など、再検討を要請する発言が相次ぎました。

 これを受けて、3度目の押し込みが行われました。
そして終了後、21:00から再度県教組交渉団に対する説明がありました。3回目の当局の回答としては
1 「平成22年3月31日までの間、部活動指導業務に従事した時間が8時間に及ぶ場合は、2400円に100円を加算する」
2 「今回の交渉経過を重く受け止め、今後の交渉において誠意を持って話し合う」
という内容でした。
下伊那支部としては
1 義務特手当削減は制度的なものではなく、財政的な理由によるものという表明をさせることで、来年度以降再交渉の余地を残しておくことができる。
2 へき地手当について、従来の解決済みという姿勢から、今までの交渉経過には問題があり、今後誠意を持って話し合うと、解決に向けて糸口の見える内容になっている。
3 100円とは言え、県独自の措置を形の上で残させたことは、今後の足がかりになる。
という3点を是として、この内容で妥結すべきだと主張しました。
「態度を保留して支部に持ち帰って検討したい。」「小学校の組合員が納得しうるか疑問」との声もありましたが、最終的に執行部の責任として回答の受け入れをしたい旨の花岡執行委員長の表明があり、協議は終了しました。

22:00から交渉が再開されて、前述の2点の回答が読み上げられた後、山口教育長から以下のようなコメントがありました。
「一昨年のへき地手当の削減等を含めて、職場の思いをお聞きした。そういったものを含めて今回の交渉の経過を深く受け止め、まだ今の段階で皆さんにお伝えするものは持っていないが、今後誠意を持って、この問題についても話し合いをしていきたい。」
「人材確保法についても、制定以来優秀な人材を県下に確保したいという思いは変わっていない。今度ともこの問題については考えて参りたい。」 
 
 最終的に義務特手当削減の提案を押し返せなかったのは残念ですが、県財政が非常に厳しく、また全国的にも賃金カットが多くの県で行われている情勢の中で、県から独自措置の継続を引き出したことは一定の成果と言えます。
 また、下伊那支部としては悲願であるへき地手当の支給率の回復に向けて、従来の解決済みの姿勢から、県教委が話し合いのテーブルにつく姿勢を示したことは、今後の交渉につながる成果と考えています。
 17日の県教組独自要求確定交渉でも、下伊那の教育課題など、県当局に訴えてきたいと思います。ご支援よろしくお願いします。