定期大会議案書の要点

(2) 栄養教諭制度について
文部科学省は、学校給食の主要目的を、「栄養改善」から「食育」に転換する学校給食法の改正案を近く国会に提出する見込みです。当初、学校給食は戦後の食糧難を背景に不足しがちな栄養を給食で補うことを主目的としていましたが、食糧事情が改善された上、子どもの食生活の乱れが指摘され05年に「食育基本法」も成立し、学校給食法も実態に合った内容にする必要があると判断したものであると見られます。改正のポイントは
①学校給食の主な目的を、「栄養改善」から「食育」とする。
②地元の食材を活用し、生産現場での体験などを通じて郷土への愛着を育てる。
③食育を推進する栄養職員の役割を条文に盛り込み明確にする。
④子どもに必要な栄養の量やバランスを示す。
⑤食中毒防止策など衛生管理の基準を規定し、徹底させる。
   となっています。
その中で、食育推進の中心となる栄養教諭の役割も条文として明記されています。
 ①栄養管理
 ②食育に関する学校全体の計画作
 ③一般教員への指導
 ④地域や家庭などとの連携 などを担うと規定されます。
長野県でも07年4月から栄養教諭の配置がこなわれるようになり、07年度が5名、08年度には20名(飯田下伊那地区3名)の栄養教諭が配置されました。
 07年1月の県教委との交渉の際、
 ①栄養教諭の勤務条件等について問題が生じた場合は、組合と誠意をもって話し   合う。
②栄養教諭導入について、年度中にその意義など制度について周知する。
③任用にあたっては、本人の意に反した任用はおこなわない。
④教職員として採用された者は、栄養職員の職に戻ることはない。
⑤平成20年度以降の任用・配置については、さらに組合と話し合う。
⑥早急に県として食育に関する推進計画を策定するよう県教委としても努力する。
⑦栄養教諭の過重負担をなくすよう条件整備に努力する。
⑧有効な研修が実施されるよう、組合と話し合う。
という8つの確認がなされています。その一方で、性急すぎる栄養教諭の配置提案であることから、現場でともに働く多くの一般職員がその存在を知らなかったり、勤務条件等に関する疑問点が指摘されたりしています。実際、県教委から各校に配布された「小・中学校における食育推進ガイド」には、「指導の全体計画」や「学年別年間指導計画」の作成例が載せられています。将来的に作成例のような細部にわたる計画作成が求められるとすれば、栄養教諭への負担増は多大なものになるのではないかと危惧されます。下伊那支部としては「栄養教諭制度」に関する正確な情報を入手し、広く組合員に伝えるとともに制度導入の趣旨が活かされ、栄養教諭の過重な負担とならないよう注視していきます。
(3) 学校給食の充実と安全確保
昨年度、中国の工場で製造輸入された冷凍餃子を食べ、3家族計10人が中毒症状を起こす事件が発生しました。学校現場で、健康被害を訴えた児童や生徒はいませんでしたが、全国では32都道府県の601校の小中学校が、県内でも4つの学校施設が、この食品会社製造の冷凍食品を使用していたことが分かっています。文部科学省は、安全が確認されるまで引き続き同社製品の使用を控えるよう各都道府県教育委員会に要請を出しました。しかし、一方で、国の食糧自給率が40%を切り、多くの食料を外国に頼らなくてはならないという現状の中、質を維持しながら、給食費を安価に押さえなくてはならないという課題もあります。
また、07年3月に根羽村、10月に天龍村、さらに08年2月には平谷村において、賞味期限切れの給食用食材が納入されていたことが、07年度末に明らかになりました。いずれも納入された段階で給食センターの職員が気づき、最終的に給食としては使われずにすみましたが、あってはならない事態です。食材を提供する側にある県学校給食会は、「近く支部長会議を開き、再発防止の対応を協議する」と話しているので、今後の対応を注視していく必要があります。食の安全、特に子どもたちが毎日口にする給食の安全確保に対しては、細心の注意を払っていかなくてはなりません。
近年、「地域食材の日」を年に複数回設定し「地産地消」の取り組みが県教組下伊那支部内の多くの学校で行われるようになり、子どもたちの食・人・地域に対する関心を高めるとともに、学校給食の充実という点で大きな役割を果たしています。さらに、食材の産地や遺伝子組替食品に対応するための検査項目が細分化されたり、食材や調理に関する衛生管理の強化がなされたりして、調理場の運営自体が煩雑になってきています。その中で食物アレルギーをもった子どもたちに対して、アレルギー対応食(除去食・代替食)をつくるといったより個別でこまやかな対応も求められるようになってきています。栄養職員や調理員の過重化を認識するとともに、次代を担う子どもたちの健康の基となる「食」を守るためのとりくみが求められます。
子どもたちの側に立った学校給食の一層充実をはかるために、
①学校教育の一環としての給食であること
②給食の質を低下させないこと
③教室とセンターや調理場とのパイプを一層強めること
を目標にして、栄養職員・調理員やより多くの保護者・地域住民の意向をもとに、地教委に申し入れをしていく必要があります。