定期大会議案書の要点

1 賃金・諸手当の引き上げ
(1) 春闘の現状と実感なき景気拡大
02年から続く景気拡大は6年にもおよび、一部の企業では史上最高益を更新するところもあります。政府は「戦後最長の景気拡大」であるといっています。しかし、最近では食料品やガソリン・灯油等の燃料費や生活必需品の値上がり、4月からは公共料金も値上がり、多くの労働者にとっては好景気という実感はありません。
大企業はコスト削減をめざして、人減らしや賃下げ、パート・派遣・請負など非正規雇用への置き換えをすすめています。その結果、07年8月には、雇用者の30%以上(1,731万人)が非正規雇用者となっています。労働者の平均賃金は9年連続で下がり続け、00年と06年を比較すると、年収200万円未満の低賃金層が200万人近くも増えています。
こうした情勢の中で08年春闘では、賃金の底上げと格差是正に結びつく賃金改善、非正規労働者の処遇改善や正社員化、労働時間の短縮などを目標に掲げました。低迷する個人消費の起爆剤にと福田首相からも産業界に異例の要請があり、賃上げ水準が焦点となり、労組側は前年水準を上回る賃上げを目指しましたが、大半は前年横ばいの水準に留まっています。
春闘の相場形成に大きな影響力をもつ自動車、電機、鉄鋼などの主要労働組合に対し、経営側の回答では、大半が3年連続の賃上げとなっています。しかし、急激な円高や原燃料価格の高騰から、賃上げ幅は前年並みの水準に留まりました。2,000円の統一要求をおこなった電機大手の回答は、前年と同じ1,000円で横並びとなっています。鉄鋼大手では、新日本製鉄やJFEスチールなどが2年分で1,500円(産別試算)と前回実績を上回る水準を確保しました。
自動車では、春闘相場をリードするトヨタ自動車が組合要求の1,500円に届かず、前年実績と同じ1,000円で回答しています。しかし、日産自動車は、定期昇給と賃上げを含めた賃金改定原資で前年実績(6,700円)を上回る7,000円の満額回答となり、ホンダは逆に前年を100円下回る800円で決着しています。
一時金では、トヨタが253万円と満額回答したほか、三菱電機など業績を反映して前年を上回る回答もありました。また、住友金属工業は前年と同様に一時金(年間226万円)に加え、「ライフプラン支援一時金」を1人平均20万円支給することで、労組側要求(年間240万円)を実質的に上回る回答となりました。
連合は春闘の妥結結果を公表し、賃金改善は6,401円(定期昇給分込み)となり、前年より259円のプラスだったとしています。高木剛会長は「労働分配率の反転、内需拡大に十分とは言い難いが、厳しい状況の中、昨年を超えることはできた。続く中小、パートなどの交渉につなげたい」と述べました。金属労協の集中回答では1,000円(定昇分除く)前後の賃金改善で前年並みでしたが、内需産業も含めた全体では前年を上回りました。業種別では製造業が前年を89円下回ったものの、商業・流通や交通運輸では昨年を500~1,000円上回り、内需産業を中心とした組合では賃金改善額が1,182円(定期昇給分除く)で、前年より142円プラスとなっています。パートの組合は、昨年を2.6円上回る22.4円(要求25円)でした。
今春闘では、昨年並みまたは多少上回る結果となりましたが、好調な企業業績が労働者へ還元されているとは言い難く、その伸びも抑えられている傾向にあり、業種によってもばらつきが見られます。また、“賃上げ”といいながら、全社員の基本給を一律に底上げするベースアップ(ベア)に代わって、賃上げ原資を育児支援など特定分野に回す動きが電機業界を中心に広がりはじめています。経営側は人件費の伸びを抑えられますが、賃上げの恩恵が全社員に行き渡らない恐れもあります。
県内でも06年9月中間決算で増益となった企業が多く、業績上では景気拡大が続いています。しかし一方で、02年以降、県内の平均賃金は目立って伸びておらず、個人消費の現場も「回復を実感できない」との受け止めが目立ちます。職業安定所別求人倍率は、大町、飯田で微増傾向ではありますが、他地域では前年を下回っており厳しい状況となっています。有効求人倍率など雇用面でも地域間格差が出ており、中小企業や労働者にとっては、「実感なき『最長景気』」の様相になっています。